2019年9月10日(火)、名古屋市東区にある文化のみち二葉館において、やまと絵の初心者講習会を開催しました。「やまと絵」の大家 小寺礼三氏から描写法を継承する小寺陽子氏(S45文英卒)を講師に迎え、8名の参加者に丁寧に教えていただきました。
やまと絵は中国の唐絵の技法をベースにして平安時代に発展した絵画です。

課題の「菊慈童」

課題は「菊慈童」の模写です。何もないところから書き始めるよりも、模写を通して線の書き方を真似するほうが上達が早いのだそうです。
まずは、A3サイズのお手本のカラーコピーを下に敷き、にじまないように防水加工を施した美濃和紙を重ねて、薄くすった墨で面相筆を使って輪郭を写し取ります。集中しないと細長く均一な線が書けないので、各自黙々と取り組んでいました。この工程は作業時間の約半分を占め、輪郭の描き方の良し悪しで作品の出来栄えが変わるそうです。

次に、薄い色から順に専用の絵の具を水で溶いて塗っていきます。先生がお手本として混ぜた絵の具も使い、絵皿や絵筆を皆で使いまわし、色や塗り方を先生に質問して各自比べながら、和気あいあいと塗り進めていきました。さながら高尚な塗り絵といったところでしょうか。

最後に、輪郭よりは少し濃い墨で輪郭を再びなぞって完成です。
目、鼻、口の位置は写し取ったお手本通りですが、ちょっとした筆遣いで顔の表情が変わるところが難しくもあり趣深いところで、八人八色の菊慈童が出来上がりました。

この後は太閤本店にて小寺さんにも参加してもらって昼食をいただきました。台風一過での猛暑も忘れて、皆で楽しい時間が共有できました。

「菊慈童」とは

周の時代に王に仕えた童子で、皇帝の枕をまたぐ過ちを犯しました。王からお経の書かれた枕を渡されて流罪に処されますが、菊についた朝露を飲んで不老不死になりました。この伝説は能の演目にもなっています。

お手本の「菊滋童」
参加者の作品